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アイコスの「煙が出ない」は本当?広告表現を検証する

煙が出ない、有害物質が大幅に少ない。加熱式タバコの広告でよく見る表現は、どこまで裏づけがあるのか。メーカーの主張、規制当局が認めた範囲、独立した研究の指摘を並べて整理します。

公開日 更新日 Puff Counter Team 5 分で読めます

  • 加熱式タバコ
  • 検証

かんたんな答え

燃焼による煙は出ませんが、代わりにニコチンを含むエアロゾルが発生します。米国FDAは有害物質への曝露が減るという表示を条件付きで認可した一方、健康リスクが下がるという表示は認可していません。よく引用される95%という数字は電子タバコに関する2015年の推計で、加熱式タバコのものではありません。

加熱式タバコの広告には、慎重に作られた表現が並びます。煙が出ない。灰が出ない。有害物質が大幅に少ない。

これらは嘘ではありません。ただし、どれも「言っていないこと」のほうが重要です。ひとつずつ見ていきましょう。

「煙が出ない」が意味すること

燃焼していないので、燃焼による煙は出ません。ここは事実です。

出ているのはエアロゾルで、加熱で生じた微細な粒子とニコチンが含まれます。目に見えにくく、においも弱い。だから「何も出ていない」ように感じられます。

言葉としては正確な表現が、受け取る側では「無害」に変換される。この距離が、この種の表現の効果を生んでいます。煙が出ないことは、何も吸っていないことではありません。

FDAが認めた範囲、認めなかった範囲

この話でいちばん重要な区別です。

米国のFDAは2020年、IQOSについて、燃焼を伴わないため特定の有害物質への曝露が減るという趣旨の表示を条件付きで認可しました。

同時に、健康リスクが下がるという趣旨の表示は認可していません。申請された二つの主張のうち、片方だけが通ったという構図です。

「体に入る量が減る」と「病気になりにくくなる」。この二つは日常会話では地続きに聞こえますが、規制当局はここに明確な線を引きました。広告を読むときは、この線がどちら側にあるかを確認してください。

「95%」の数字はどこから来たのか

加熱式タバコの話の中で、95%という数字が出てくることがあります。

この数字は2015年に英国で電子タバコについて示された推計で、加熱式タバコを対象にしたものではありません。しかも実測値ではなく専門家の評価に基づく推計で、当時から算出方法への批判がありました。

つまり、もともと議論のある数字が、対象の違う製品に流用されているという状態です。会話の中でこの数字が出てきたら、何についての数字なのかを確かめる価値があります。

「有害物質が90%以上減る」の読み方

この種の数字は、測定対象になった特定の物質群についての話です。

注意点が二つあります。ひとつは、すべての物質が一律に減るわけではないこと。独立した分析では、一部の物質が紙巻きより高い水準で検出されたという報告もあります。

もうひとつは、曝露量とリスクは比例しないことです。特に心血管疾患のリスクは、比較的少ない曝露でもかなり高いところまで立ち上がることが知られています。曝露が9割減っても、リスクが9割減るとは限りません。

誰が研究に資金を出しているか

加熱式タバコをめぐる研究には、業界の資金によるものが相当数含まれます。そして資金源によって結論の傾向が異なるという指摘が、独立した研究者から繰り返し出ています。

これは、業界の研究がすべて誤りだという意味ではありません。ただ、数字を見たときに「誰が測ったか」を確認する習慣は有効です。WHOをはじめとする公的機関は、加熱式タバコについて有害であり依存性があり、リスク低減が証明されたわけではないという立場を維持しています。

広告が触れないこと

最後に、この種の表現がほぼ扱わない領域を挙げておきます。

  • ニコチン依存は続きます。装置を替えても、依存の仕組みは変わりません。
  • 長期の健康データはまだ足りません。広まってから10年ほどでは、答えの出ない病気があります。
  • 周囲への曝露はゼロではありません。においが弱いことは、成分がないことではありません。
  • 禁煙に有効だという十分な根拠はない、というのがWHOの見解です。

広告を読むときの3つの質問

この分野の表現を判断するときは、次の3つを確認するだけでかなり整理できます。

  1. 何と比べているのか。紙巻きタバコとの比較なのか、吸わないこととの比較なのか。前者であれば、良い数字が出るのは当然です。
  2. 曝露の話か、リスクの話か。「有害物質が減る」は曝露、「病気になりにくい」はリスク。規制当局が認めているのは前者までです。
  3. 誰が測ったのか。業界の資金による研究か、独立した機関のものか。公的機関の見解と食い違うなら、その理由を確認する価値があります。

この3つを通すと、多くの表現は「間違ってはいないが、思ったほどのことは言っていない」という位置に落ち着きます。

今日の2分

広告の検証はここまでにして、自分の数字に戻りましょう。今日1日、いつも通りに吸って、使った本数を数えるだけです。

どの表現が正しいかを突き詰めても、摂取量は1本も減りません。減るのは、数えて、上限を決めて、下げたときだけです。そして、やめられた人の多くは一度で成功したわけではなく、何度か試したうちの一回が続いた人たちです。

Puff Counterは実際に記録した本数から週ごとの上限を組み立てるので、広告の数字ではなく自分の数字で判断できるようになります。まずは今日の1日分を数えてみてください。

よくある質問

「煙が出ない」という表現は誤りですか?

燃焼由来の煙が出ないという意味では正確です。ただし出ているのはエアロゾルで、ニコチンや加熱で生じた成分を含みます。煙が出ないことと、何も吸っていないことは違います。表現そのものより、そこから読み取られる印象のほうが問題になりやすい部分です。

有害物質が90%以上減るという説明はどう理解すればいいですか?

測定対象となった特定の物質群について、量が下がったという意味です。すべての有害物質が一律に減るわけではなく、種類によっては紙巻きより多く検出されたという報告もあります。曝露量の減少は、病気のリスクの減少とは別の指標です。

95%安全という数字は加熱式タバコのものですか?

違います。この数字は2015年に英国で電子タバコについて示された推計で、加熱式タバコを対象にしたものではありません。当時から算出方法に批判があり、他の製品カテゴリーに当てはめて使うのは正確ではありません。

加熱式タバコの研究は信頼できますか?

研究の質はさまざまで、資金の出どころによって結論の傾向が異なるという指摘が独立した研究者から繰り返し出ています。誰が資金を出したかを確認する習慣が有効です。WHOなど公的機関の見解と、業界資金の研究の主張が食い違う場面は少なくありません。