喫煙は骨の治りを遅らせるのか
喫煙は骨折の治りを遅らせ、骨がつかないリスクとインプラントの失敗を増やします。治す力そのものは、やめて数日で戻りはじめます。
かんたんな答え
遅らせます。喫煙は骨折の治りを遅くし、骨がまったくつかない偽関節のリスクを高めます。歯科や整形外科のインプラントの失敗も増え、骨密度も低くなります。仕組みは血流の低下です。ニコチンが細い血管を縮め、一酸化炭素が血液の運べる酸素を減らします。
たばこと自分の骨を結びつけて考える人は、ほとんどいません。それがある日の午後、いきなり切実になります。転んで、骨折外来に行き、外科医に喫煙の有無を聞かれ、答えたあとの間が、思ったより長い。
骨は生きた組織で、しかも異例なほど豊かな血流を持っています。それを修復することは、あなたの循環がこなす仕事のなかで、もっとも要求の厳しいもののひとつです。だからこそ、喫煙はここまで強く邪魔をします。
骨が治るには何が必要ですか
治りかけの骨折は、工事現場です。まず血のかたまりが足場になり、そこへ新しい血管が伸び、細胞が到着して軟骨を、続いて骨を敷いていきます。そして体重を支えられるものになるまで、何か月もかけて作り替えられます。
そのすべての段階が、酸素を欲しがり、血液に依存しています。
そこに二つの仕組みが働きます。
ニコチンが細い血管を縮める。 骨折部に伸びていこうとしている細い血管は、まさにいちばん影響を受ける血管です。
一酸化炭素が血液の運べる酸素を減らす。 一酸化炭素に占領された赤血球は、酸素を運んでいません。届いた血液でさえ、届ける量が少なくなります。
少ない血液が、少ない酸素を積んで、体のなかでもっとも酸素を欲しがる修復に向かう。そういう状態です。
実際には何が起きますか
骨折の治りに時間がかかる。 ギプスの週数が増え、体重をかけられるまでが延び、仕事を休む期間が長くなります。
偽関節。 ここは知っておく価値があります。くっつかなかった骨折は、放っておいても解決しません。追加の手術が必要になり、骨移植をすることもあり、痛みや機能の低下が残ることもあります。喫煙者ではこの割合が高くなります。
脊椎固定がつかない。 固定術は、意図的に骨をくっつける手術です。多くの脊椎外科医は、喫煙をそれが成立しない大きな危険因子として扱います。
歯科インプラントの失敗。 インプラントは顎の骨と結合することで働きます。それは骨の治癒であり、しかも喫煙が歯ぐきの健康と血流と術後の治りを同時に損なっている口の中で起こります。処置の前後の禁煙を求める歯科医は多く、喫煙者にはインプラントを行わない方針の歯科医もいます。
骨密度が低い。 治りとは別に、喫煙者の骨密度は平均して低い。つまり、そもそも折れやすいということです。この影響は閉経後の女性でより大きくなります。そして喫煙は、閉経が早く訪れることとも結びついていて、エストロゲンの低い期間が長くなります。
加熱式たばこなら関係ないのですか
分けて書きます。細い血管を縮めているのはニコチンそのもので、届け方を変えても、その作用は残ります。骨の治りに関わるのは、まさにその部分です。
一酸化炭素は燃焼から生まれるもので、紙巻きたばこを燃やさなければその分は減ります。ただし、加熱式たばこを使っている人の骨折の治りやインプラントの成績についてのデータは、まだ十分にありません。「わかっていない」を「大丈夫」と読まないでください。そして歯科医や外科医には、紙巻きだけでなく、加熱式もベイプもニコチンパウチも申告してください。
いま特に関係がある人
次のどれかにあてはまるなら、これは背景情報ではなくなります。
- 骨を折って、いま治している最中である
- 整形外科の手術が決まっている(固定術、人工関節、骨に関わる処置)
- 歯科インプラントの相談をしている
- 骨密度が低いと言われた、あるいは骨粗しょう症がある
- 走る習慣があるなど、疲労骨折のリスクがある
- 以前、治りの遅い骨折や、つかなかった骨折を経験した
ここからがいい知らせです
骨の治りは、たばこの害のなかでは珍しく、必要な改善が速く訪れます。
一酸化炭素はおよそ24時間で抜けます。ニコチンによる血管の収縮は、やめて数日で解けます。つまり、治りかけの骨折に届く血液は、最後の1本から数日で改善します。何年も先の話ではありません。
いま治している骨のために利益の大半を受け取るのに、10年前にやめている必要はありません。いまやめる必要があるだけです。
骨密度のほうは、もっとゆっくりです。骨は何年もかけて作り替えられるので、改善もなだらかです。けれど治す力、つまりこれからの数か月がどう進むかを決めているほうは、速く応えます。
骨折を治している、あるいは骨の手術を控えているなら
- 外科医や歯科医に正直に伝える。 本数も含めて。計画も経過の見方も変わりますし、禁煙支援につないでくれることも多くあります
- きりのいい日を待たず、いまやめる。 吸わなかった1日は、あなたの骨折によりよい血液と、より多くの酸素が届いた1日です
- ニコチン製剤について聞く。 手術から回復しながらの離脱はつらく、しかも避けられます。自分に使えるものは、薬剤師か担当のチームに確認してください
- ギプスが外れる日をゴールにしない。 治ったように見えたあとも、骨の作り替えは何か月も続きます
- 食事と動き方は指示に従う。 骨には材料と、適切な負荷が要ります。あなたのけがに何が正しいかは、担当のチームが教えてくれます
- 急いでいないなら、まず数える。 3日間すべて記録すれば、減らしはじめる本当の出発点が手に入ります
Puff Counterは数える部分を引き受けます。スマホでも時計でもホーム画面でも、1本あるいは1回の吸い込みごとに1タップ。実際の平均から週の上限が計算し直され、線が下がるのが見える履歴が残ります。
今日の2分
骨折を治している最中、あるいは骨の手術を待っているなら、やめる日を決めないでください。今日やめて、吸うはずだった本数を数えてください。
あなたの骨は、いままさに作り直されています。それを支えている血液は、いま、本来運べるはずより少ない酸素しか運んでいません。この過程全体のなかで、それだけが、まだ完全にあなたのものである変数です。
よくある質問
喫煙していると骨折は治りにくくなりますか?
治りにくくなり、しかもはっきり差が出ます。骨の修復は、酸素と材料を積んだ豊かな血流が骨折部に届くことに依存しています。ニコチンは細い血管を縮め、一酸化炭素は血液が運べる酸素を減らします。その結果、治るのに時間がかかり、うまくいかないことも増えます。
偽関節とは何で、喫煙とどう関係しますか?
偽関節は、折れた骨がくっつかないまま残る状態です。追加の手術をしなければ、そのまま治りません。喫煙者ではこの割合が高くなります。骨の修復は体のなかでもっとも血流を必要とする過程のひとつで、喫煙はまさにその供給を細くするからです。
喫煙で歯科インプラントは失敗しやすくなりますか?
リスクはかなり上がります。インプラントは顎の骨と結合することで機能します。これは名前を変えた骨の治癒です。しかもそれが、喫煙によって歯ぐきの健康と治りも損なわれている口の中で起こります。処置の前後に禁煙を求める歯科医は少なくありません。
禁煙すると骨密度は戻りますか?
喫煙者の骨密度は平均して低く、禁煙は時間をかけた改善と結びついています。ただし、その改善はゆっくりです。速く戻るのは治す力のほうで、血流と酸素の供給は数日から数週間で回復します。骨の手術の前の禁煙が、いつ始めても価値がある理由はここにあります。